ナイジェリア戦惨敗が落とす影

Jリーグの危機を象徴するような惨敗だった。リオ五輪の開会式より一足先に始まったサッカー日本代表・手倉森ジャパンの初戦はナイジェリアに4−5で敗れた。一般的に得点力不足が指摘される日本だが、リオ五輪初戦で露呈したのはあまりにもろいガラスの守備だった。

5日間で3試合のリーグを戦う短期決戦では、初戦の先制点が重要な意味合いを持つ。手倉森監督も選手たちもその意味合いは十分に理解していたはずだった。ただ、その先制点はもろくもナイジェリア側に奪われた。そのナイジェリアのコンディションはやはり良くなかった。当初7月29日に初戦の開催地ブラジル・マナウス入りするはずだったが、サッカー協会の手違いなどで現地入りは試合当日の7時間前。後半には予想通り足が止まり、半分は流して試合をしている状態だった。

そのナイジェリアに勝ちきれないのだから、日本と世界の差は大きいと言わざるを得ない。というか、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)ですら、日本のチームは苦戦しているのだからアジア「トップ」の地位も揺らいでいる。

それを象徴するのが守備だ。

守備というと、一般的にイタリアのカテナチオのようにディフェンスラインを下げて数的優位を作ってボールを奪ってからカウンターに転じるサッカーをイメージするかもしれないが、そうではない。ディフェンスの基本はチャレンジではなく、リスクを下げて確実に相手のボールを奪うこと。これは間違いではないけれど、Jリーグが1993年に発足して20年あまり。その意識が強くなりすぎているのが昨今の状況だ。

つまり、相手が攻撃に入ったズルズルと守備ラインを下げて相手の攻撃を遅らせて、抜かれないことが大前提。これが相手を自分の目の前で自由にプレーさせることを良しとして、「日本のJリーグの守備は緩くて甘い」と言われる根拠になっている。

この原因はこれまで何度も指摘されている。たとえば直近で言えば、6月にはこんな記事がスポーツ報知の「日本代表GK東口、海外組から「Jリーグのスピード遅すぎる」と指摘され「歯がゆい」」という記事に出ている。

コメントを引用すると、

海外組から指摘されたJリーグのプレースピードが遅い理由を「(ハリルホジッチ)監督も言っているけど、Jは相手のミスを待っているチームが多すぎる。そういうところが、スピードが上がらない原因だと思う。打ち合いを嫌がる傾向もある」と分析。守備時にも積極的にボールを奪いに行かず、相手のプレーを遅らせてミスを待つ傾向が、海外組に“遅い”と感じさせる部分だと語った。

今回のナイジェリア戦でも同じだ。守備陣はまずリスクを冒さずにしっかりセーフティーに試合に入ろうという意識が強かったはずだ。それがズルズルと守備ラインを下げ、ナイジェリアのFWボールが入っても体の寄せが甘くて自由にボールを持たせてしまう。欧州だったらDFが相手のFWに体を当てて相手がバランスを崩す、というシーンがよく見られるが、日本の試合でDFがこうした守備をすることはほとんど見ない。

センターバックが育たないのは「攻め」ではなく相手のミスを「待つ」守備を重視されるからかもしれない。結果、コンディションがあまり良くないとはいえ、身体能力や足が長いナイジェリアの選手たちへの対応が後手後手に回り、プレーは中途半端に。逆にミスが増えて失点する。

それが5失点という大量失点に結びついたと思われる。確かにサイドバック・室谷の目測ミスやセンターバック・上田の中途半端なクリアはあったかもしれないけれど、むしろそこへ至るまでの組織的な守備が甘すぎた、というのが個人的な感想。

両チームで9得点という大味な試合が映したのは、日本のリオ五輪予選突破という短期的な目標達成だけでなく、Jリーグの行く末にも影を落とす結果に見えるのはぼくだけだろうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事
Theme by LIQUID PRESS.