Uberはキャズムを超えるか(3)

相当、間が空いてしまいましたが、Uberの話の続きを書いておきます。Uberがタクシー配車アプリの黒船として注目を集めていますが、実は結構前から日本にはタクシー配車アプリはあるのです。

火付け役は東京の大手タクシー会社、日本交通。2011年1月、全国に先駆けて日本初のタクシー配車アプリ「日本交通タクシー配車」の配信をはじめ、現時点でダウンロード数は40万件を超す。

下記に日本で提供する主なタクシー配車アプリを表にしてみたが、「全国タクシー配車」とLINEタクシーは日本交通との提携や協業で提供している。

タクシー配車アプリ

配車アプリの競争力は利用可能地域と配車可能台数からなる「配車網」

タクシー配車アプリの競争力を見るポイントはいくつかある。

1つ目は配車網だ。アプリがいくら優れていても、配車する時間が遅くなったり、車両が少なくて配車できなかったり、営業エリアが違うので使えないのでは使い勝手が悪い。

その意味で現状、配車網で最も優れているのは全国タクシー会社とLINEタクシーだ。後で詳しく書く予定だが、LINEタクシーは日本交通が提携する配車網を使っているため、近く全国タクシー配車アプリと同様の配車網に成長する見通し。

ただ、局所的な強さで言ったら、東京都内だけで使うならスマホdeタッくんに分がある。都内法人タクシーの55%をカバーしており、配車効率は良さそう。

2つ目は決済関連機能だ。タクシー利用者の不満でよく聞くのが料金が不透明という点。確かに、日本の場合はタクシー料金が認可制で、初乗り運賃と走行距離、乗車時間の組み合わせで決まる。たとえば同じ距離を走ったとしても、渋滞で時間がかかれば、その分割高になる。目的地と所要時間は同じでも、走行ルート次第で料金は変わる。

この不満を解消する機能に、目的地までの料金概算機能がある。目的地までのルートを事前に計算し、納得した上で乗車するというものだ。その機能は全国タクシー配車とUberが持っている。関連でネット決済機能も配車アプリの特徴だ。事前にアプリにクレジットカードを登録しておけば、降車するときに現金を支払わずにすむ。

3つ目はその他の機能になる。表には書いていないが、LINEは友達と乗車したときに、アプリで料金の割り勘設定ができる。タクシー東京無線には配車予約機能があり、予定した時刻に配車してもらえる。

ちなみに、Markezineの「利用者が最も多いタクシー配車アプリは?」によると、利用者が最も多かったのは全国タクシー配車で、満足度が最も高かったのは「スマホdeタッくん」だった。

総じて現状ではUberは話題性は大きいが、日本での事業拡大はまだこれから、といった感じ。その最も大きな理由が上述した競争力のポイント1に深く関係する。つまり、利用できるタクシー数が競合に比べて圧倒的に少ないからだ。

Uberは東京都内でハイヤーの配車から参入したが、それは需要が大きい東京でニーズを探るという意味だけでなく、現実的に協力を得られるタクシー会社が限りなく少なく大きく展開はできなかったという側面も大きい。実際、「黒船・ウーバーが点火したタクシー下克上」という日経新聞の記事によると、2014年10月時点でUberで利用できるハイヤー・タクシーは合わせて300台程度と見られている。これは国内勢の配車アプリに比べて圧倒的に少ない。

「よそ者」Uberに立ちはだかる保守の壁

なぜこんなに違うのか。その理由は前回2回にも多少触れてはいるが、良くも悪くも保守的で横並び体質の業界構造がある。その象徴がこれまでの無線配車サービスだ。タクシー会社というのは大半が中小企業。車両保有台数が10台程度という会社も少なくない。そのような中小企業が生計を立てていくには流しのほかに、配車でも利用してもらう必要がある。ただ、利用しやすい配車サービスには結構な額のインフラ投資がかかる。

それがデジタル無線配車サービスだ。無線のインフラ整備には1社だけでは負担が大きいので、ここは互いに協力し合おうというのが無線連合で、東京で言えばチェッカー無線や東京無線などがその代表例だ。その投資がある分、インターネットというインフラが出てきた当初の反応は遅れた。

ただ、日本交通の川鍋社長がネット配車アプリにいち早く取り組み、成果を出すにつれて次はこのアプリだと参加するタクシー会社が続出した。元々横並び体質なので、雪崩を打ったように参加が増えている。それが「スマホdeタッくん」に象徴されている。

Uberはやはり海外のサービスなので、国内のタクシー会社は懐疑的な目で見ていたと思われる。いわば「よそ者」だったわけだ。しかも、新たな参入というメディアの取り上げ方からすれば、既存のタクシー会社が身構えるのも無理はない。その理解の遅れを川鍋社長は結果的に上手に利用して、こんなに便利なサービスがある、として提携を拡大していったわけだ。

Uberはそこで次の一手として、海外で評判の高いライドシェアの実験を福岡でやろうとした。つまり、営業許可を受けずに自家用車を共有するサービスだ。Uberの言い分は乗客からは運賃を取らず、一般から募集したドライバーに「データ提供料」として対価を払うものだったが、国土交通省は「白タク」と判断して「待った」をかけた。(国交省がUberに「待った」 福岡の実験は「白タク」と判断

正直、日本のタクシー市場では市場のことをよく知っている日本交通をはじめとする日本勢が一歩リードしているように見える。4月には配車アプリを使った「ママタクシー」や車内で動画広告を視聴すると50円の割引クーポンを発行する実験など、矢継ぎ早に手を打っている。

ただ、Uberにもチャンスがないわけではない。最大の武器はグローバルサービス。世界どこでも使えるサービスなので、外国人にとっては日本のアプリに比べて馴染みのあるアプリだ。偶然にも5月13日に財務省が発表した2014年度の国際収支統計によると、訪日客の増加に伴う旅行収支は55年ぶりに黒字に転換したとのこと。(訪日消費が原動力に 旅行収支55年ぶり黒字)訪日外国人も14年度は1467万人で過去最多。今後も東京五輪の開催で観光客は増加が見込まれる。

Uberはこうした追い風をうまくつかめるか。日本での成功するためのハードルは決して低くはない。

【バックナンバー】
Uberはキャズムを超えるか(1)
Uberはキャズムを超えるか(2)

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