アギーレ監督解任の必然

サッカー日本代表のアギーレ監督の解任が3日発表された。昨年秋頃から八百長問題に端を発して解任の火種はずっとくすぶっていたが、決定打となったのはアジアカップで優勝が1つのベンチマークとされていたにも関わらず、決勝トーナメント初戦でUAEに敗れてベスト8に終わった点だと思う。

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■見えない強化ポイント

日本サッカー協会は八百長を巡りスペインのバレンシア予審裁判所がアギーレ監督の八百長疑惑に関する検察側の告発を受理し、W杯予選を見据えた代表強化のリスクが大きくなった点を理由に挙げた。ただ、それは単純にタイミングの問題だったのではないか。

大仁会長はアギーレ監督の強化は順調に進んでいて、今回の解任に至った結論は大変残念だとしている。しかし、これまでの強化試合の方向を見ていると、果たしてそうか。

若手を主体としたチーム作りを目指し、武藤や柴崎など積極的に代表に呼んだ初期段階では強豪・ブラジル相手に本田ら主力を外して望んで物議を醸した。
かと思えば、代表は実力主義といって当初は招集しなかった遠藤らを呼び寄せ、気づいてみればザックJと先発の顔ぶれはほぼ変わらず。アジアカップでは成長の伸びしろを見せきれず、あっさりとベスト8で敗退した。

まだ監督就任から半年足らず。チームを成熟させるには時間がかかるのは当然。強化が過渡期にあったことは事実だろう。しかし、その強化のポイントは明確には見えなかった。

W杯ブラジル大会で「自分たちのサッカー」ができずに1次リーグ全敗で惨敗した今の日本代表に足りないことは何だったのか。

■経験とマリーシア→組織力→個の力→個と組織の融合、そして…

1993年。翌年のW杯米国大会予選で起こったドーハの悲劇。試合終了間際のロスタイムにイラクに同点ゴールを決められ、初出場を逃した日本の強化ポイントは試合運びとマリーシアだった。

試合の時間によっては、時間稼ぎのようなボール回しや安全なプレーをする必要があるという経験をした。そして、当時のオフト監督が徹底したコンパクトなサッカーを日本流に進化させるために、加茂周監督が後任に就任。ゾーンプレスという手法で日本代表を強化していった。

途中、加茂監督がW杯予選で勝ちきれずに苦しむ中で解任され、岡田武史監督が受け継いで泥臭く出場権を手にした1998年フランスW杯では1次リーグ全敗。個の力で劣る日本の生きる道は組織力しかないと、育成に定評があったフィリップ・トルシエを後任に据えた。

フラット3というディフェンスラインをひっさげ、組織で戦う力を磨いた日本は日韓共催の2002年大会、わずかW出場2大会目で決勝トーナメント進出を果たす。決勝トーナメントは初戦でトルコに敗れ、次なる課題として強化ポイントに上がったのは「個の力」。

組織力を磨いても、ベスト8以上に進むには1対1の局面で打開できる個の力や創造力も不可欠として後任として期待されたのが、日本の鹿島アントラーズに強豪のDNAを植え付けた神様ジーコ。

しかし、ジーコには選手としての実力やアドバイザーとしての手腕はあっても、監督としての実績や戦術の引き出しはほとんどなく、アジア予選は危なげなく通過するも、W杯ドイツ大会では1分け2敗で1次リーグ敗退した。

後任はオシム監督。ジーコ監督は良くも悪くも自由奔放な選手任せ。その反省から、ジェフ千葉で実績を残して育成にも戦術にも定評があり、ヨーロッパ・ユーゴ出身のオシム氏を選んだ。体調面で2010年の南アフリカ大会まで監督を務めなかったが、引き継いだ岡田監督はオシム監督の残した「遺産」を自分なりにアレンジ。世界と日本の戦力差を考えて、現実的にディフェンシブに戦いながら隙を突いて攻めるという堅守速攻路線で、日韓大会以来の決勝トーナメント進出を果たした。

そして、ザックJ。テーマは個の力と組織力の融合だ。同じ組織力で戦うというテーマだったトルシエ時代と比べて、ヨーロッパでプレーする選手は格段に増えた。本田や香川、長友、岡崎…。いわば、かつての課題だった個の力を確実に磨いてきた。その集大成として、イタリアのACミランで美しいパスサッカーを戦術として採用したザッケローニを据えたわけだ。

結果、ザックJはブラジル大会の一次リーグで「予想外」の全敗を喫した。着実に一歩一歩進んできた日本だったが、ここにきて大きな壁が立ちはだかっているような気がしてならない。

■日本代表に足りない要素

ここで、問いに戻ろう。次の2018年ロシア大会に向けた日本の強化ポイントは何か。世界のベスト8以内に入るために、何が今の日本代表には足りないのか。

実は、ここがよくわからない。日本サッカー協会はアギーレ監督を後任として発表したとき、アギーレ監督に期待していることとしておおむね次のようなポイントを挙げた。

簡単に言えば監督の手腕だ。アギーレ監督は日本の体格もプレースタイルも似ているメキシコ代表を率いてベスト16になるなどの実績がある。南米的なテクニックを駆使して戦うスタイルを再び日本代表に注入しようと試みたのかもしれない。戦術の引き出しの多さにも期待していた。

ただ、アギーレ監督就任後、その片鱗は見られたのだろうか。まだ発展途上と言われればそれまでだが、発展途上の間にも試行錯誤の片鱗や狙いは試合のプレーの中ににじむ。それがアギーレ監督の場合、ぼくには「迷走」としか映らなかった。

何を強化試合の中で試したかったんだろう。新たな人材を入れてどんなサッカーがしたかったんだろう。守備はどこのラインで奪って、どう攻めたいんだろう。攻撃はどう相手を崩したいんだろう。どれも中途半端で、チーム全体が狙いをもって守備や攻撃をしているようには見えず、個々の選手がそれぞれの考えで、連携を模索しているようだった。

それでも試行錯誤して結果が出れば、成長の証と映ったかもしれない。ただ、幸か不幸か、アジアカップでは優勝なんてほど遠いベスト8。

試合後、本田はザックJの時よりもチームの完成度は高いし、良いサッカーをしているというコメントを出し、アギーレ監督をかばった。だが、裏を返せば、成長の伸びしろが少なく、完成度が高くてもUAEに勝ちきれない日本代表の現実が浮彫になったとも言える。

試合ごとに逆転に次ぐ逆転でチームが成長しながら勝ち取ったザックJの前回のアジアカップは確かな成長を感じさせた。未完成だったからこそ、伸びしろが感じられたわけだ。アギーレJはファンの目にどう映っただろうか。

ぼくは今回のアギーレ解任は世界の強豪国ならば当然の選択だったと思う。さて、次なる後任監督には何を託せばいいのか。間違ってもピクシーことストイコビッチ氏は招聘しないでほしいと思うけれど。ぜひ日本サッカー協会は今こそ、ブラジル大会の検証をした上で次なる強化に踏み出してほしい。

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