ブラジル7失点 王国崩壊

試合終了の笛が鳴り響くと、出場停止の主将チアゴシウバに代わってディフェンスを統率してきたブラジルのダビドルイスは天を仰いだ。

開催国として優勝を期待されたブラジルだが、ドイツを相手に開始30分で5点を失い、最終的には7失点という屈辱的な歴史的大敗を喫した。報道によると、前半終了後には1万人がスタジアムを離れ、涙を流す観客も見られた。

●攻守の要欠いたブラジル

大敗の布石はすでにあった。ブラジルの攻撃の核であるネイマールが準々決勝のコロンビア戦でDFスニガの悪質なファウルによって背骨を骨折し、出場できず。DFラインの要で主将のチアゴシウバもイエローカードの累積で出場停止。攻守の要を欠いたブラジルの不安要素は大きかった。

逆に2人の欠場がブラジルのほかの選手の奮起を促すことも期待されたが、ふたを開けてみればドイツのチーム力が文字通り圧倒した。仮に2人が出場できていれば、歴史的な大敗は避けられたかもしれないが、それでもドイツの勝利は揺るぎそうにないほど、ドイツの強さは飛び抜けていた。

試合を振り返ると、前半開始早々はブラジルも高いモチベーションでドイツに攻撃を仕掛けた。しかし、ドイツのクロースをはじめとする強力な中盤がしっかりとプレスをかけて要所要所でボールを奪われる。ドイツの逆襲も当初はブラジルの中盤が積極的なインターセプトを試みて、かろうじて一進一退の攻防となっていたが、ブラジルは徐々にDFラインからボールを前線に当てられず、じりじりとドイツが試合の主導権を握り始める。

見えないドイツの圧力はブラジルのディフェンスにのしかかり、最初のコーナーキックで均衡が崩れた。左からのコーナーキックを上手にマークを外したミュラーが右足で合わせたボールはGKジュリオ・セザールの左手の先をすり抜けてゴールに突き刺さった。

●試合を決定づけた立役者ミュラー

この試合のマン・オブ・ザ・マッチ(最優秀選手)はブラジルにとどめの2得点を決めたMFクローセだが、個人的には最初の2得点に絡んだミュラーだと思っている。それほど、ミュラーの動きはブラジルのDF陣を揺さぶっていた。

たとえば、最初のコーナーキックを振り返ってみよう。当初、ミュラーの位置取りはニアサイド寄りだった。そこへ、ほかのドイツメンバーがニアサイドに走り込んでくるのと同時にスイッチして、ミュラーはファーサイドへするりとスライド。味方の選手を壁にして相手のマークを外す、いわばバスケットボールでいうスクリーンの技術を使って、マークのダビドルイスを上手に外し、フリーになったところにボールが供給。余裕を持って冷静にゴールを奪った。非常に計算されたコーナーからの得点だった。

ドイツFWクローゼのW杯通算トップとなる16点目を演出したのもミュラーだった。日本代表でもザッケローニ監督が香川や岡崎に対して、「フィールドを広く使え」と指示してサイドのタッチラインぎりぎりまで開かせ、攻撃の起点としようとしたが、まさにそのお手本のような攻撃を仕掛けた。

ミュラーは中央から斜めに下がりながら左サイドに開いたところでボールを受けると、いったん中央のクローセにボールをはたいて預ける。ここでのポイントは斜めに下がって開くことで左サイドの裏にスペースを作ったこと。そして、いったん中央にボールを渡し、相手の注意をそらしておいて、自らが空けたスペースに走り込み、スルーパスを受ける。マークも必死でついてくるが、ポストプレーのお手本のように走り込んできたFWのクローゼに落とすと、クローゼは迷わずシュート。GKがいったんはじくも、再び押し込み2点目を奪った。

これでブラジルは集中力の糸が切れ、足が止まった。プレーにも迷いが出始め前半開始早々の出足は鈍った。それでも開催国の意地で逆転しなければならない、というプレッシャーから無茶な前のめりでドイツに攻め込もうとしたところ、中盤の餌食となって見事な逆襲で立て続けに3点を奪われ、前半の5失点につながった。

もしブラジルに主将のチアゴシウバが出場できていたら、1失点したときに混乱を最小限に抑えられたかもしれない。ただ、ここでネイマールの穴が響く。攻撃の糸口が見えない焦りが攻守のバランスを崩し、王国の崩壊を招いた。

● オスカルの誤算

ネイマールの代わりに出場したのはドリブラーのFWベルナルジだが、今大会でネイマールとともにブラジルの牽引役として期待されたオスカルが実はほとんど消えていたことも敗因の1つだと思う。

もちろん、ブラジルの意地の1点はオスカルのゴールだったが、この1点はどうも開催国に配慮したドイツのプレゼントのような気がしてならない。ドイツは後半になって、明らかに攻撃の迫力が前半から落ち、プレスも弱まった。無理してブラジルのゴールを狙わず、必要最小限の労力でブラジルからゴールを2点奪っていた。

オスカルは確かに開幕のクロアチア戦で良い動きをしていたが、司令塔というほどでもなかった。ドイツのミュラーに比べると、パスの引き出し方もドリブルで突っかける迫力も、シュートも及ばなかった。もし、オスカルが自分たちのDFラインや中盤のボランチからボールをもっと受けて、ベルナルジやFWフッキをうまく生かせていたら、もう少し余裕を持って試合を運べたかもしれない。

7失点という大敗はブラジル開催でウルグアイに逆転負けした「マラカナンの悲劇」を塗り替えるほどの屈辱となった。ブラジルはこれで3位決定戦に回るが、果たしてチームを立て直して有終を飾れるか。自国開催のプライドをかけた戦いはまだ終わらない。

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