泣いた 笑った

4分間のフリーの演技を終えると浅田真央は天を見上げ、こみ上げる気持ちに思わず涙があふれた。

「自分がやりたい演技をしようと思った」

SP16位と出遅れたフィギュアスケートの浅田だが、一夜明け、気持ちを整理。浅田の代名詞でもある最高難度のトリプルアクセルを見事成功させると、6種類のジャンプ合計8回をほぼすべて成功させた(うち2回は回転不足と判定)。

後半はこれまでの呪縛から解放されたように迷いのない自信にあふれた滑りを見せ、フリーの演技では自己ベストの136.33を6点以上上回る142.71という得点をたたき出した。

「結果としては良くなかったけど、私なりの恩返しはできたかな」

安堵からか、笑顔もこぼれた。浅田がラストダンスの覚悟で挑んだソチ五輪。6位入賞と目指してきた金メダルには届かなかったが、「これが自分のやりたかった演技」と自身も評した最後のフリーは涙を笑顔に変えた。

■ 新時代の幕開け

優勝はロシアの17歳、アデリナ・ソトニコア。ホームアドバンテージもあったが、ホームだからこその重圧がかかる中ですばらしい演技を見せ、魅了した。韓国の女王、キムヨナも負けず劣らず安定したすばらしい演技を見せたが銀メダルにとどまり、約10年にわたって浅田真央とキム・ヨナで競ってきた時代は1つのピリオドを迎えた。

あと2日でソチ五輪も閉幕だが、振り返ればキーワードは「新時代の幕開け」ではなかったか。もちろん、スキー・ジャンプの葛西のように海外で「レジェンド」と呼ばれ、第一線で活躍しているベテランはいるが、新旧交代がドラマを彩った。

まず象徴的だったのは今大会で初のメダルをもたらしたスノーボード・ハーフパイプで銀メダルと銅メダルに輝いた平野歩夢と平岡卓。特に平野は15歳という若さで冬季五輪の雪上競技で史上最年少、日本の冬季五輪史上最年少のメダリストとなった。

スノボ・HPでは過去2連覇している米ショーン・ホワイトという絶対王者がいた。打倒・ショーン。そんな思いで各選手が挑んだ結果、手にした栄冠だった。

同じフィギュアでも男子個人では羽生弓弦が日本人男子初の金メダルという快挙を成し遂げた。こちらも世界選手権3連覇というカナダのパトリック・チャンを抑え、直近のGPファイナルの優勝に続いて金メダルを手にした。前回のバンクーバー五輪では5位だったが、難易度の高い4回転を着実に成功させる完成度の高い演技で、その後の3年間、世界の男子フィギュアを引っ張ってきたチャン。その立場からすれば、「今度こそ」と挑んだソチ五輪での銀メダルは浅田の姿と重なる部分もある。

五輪は4年に1回の一発勝負。運にとらわれない安定した総合評価、いわゆる世界ランキング的な発想で言えば、五輪の結果は本来の実力を反映していないかもしれない。ただ、新たなスターが登場してくるのは見ている立場としては、涙あり、喜びありの充実したソチ五輪だった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事
Theme by LIQUID PRESS.